7月の生活健康相談会報告−増加傾向変わらず。専門家もやってきた!
7月19日に、今年度二回目になる生活健康相談会を行いました。
支援者45名、当事者128名と、前回に引き続いての多数の参加でした。支援者では初めて参加する方が多く、
特に弁護士3名、ソーシャルワーカー2名など専門的な視点から関わってくださる方や、
北大医療短大生7名、岩見沢教育大生4名など勉強の一環として参加された方が多かったことが今回の特徴です。
今回もこれまで同様、物資配布(風呂券、歯ブラシ、タオル、石鹸、靴下、缶詰、おにぎり、豚汁、衣料品、ヒゲそり)、
生活相談、健康相談を行いました。また、今回初めての企画として散髪コーナーを設けました。
当初お願いしていた方が元美容師の方が急遽来られなくなったため、当日、労福会のメンバーと元理容師の当事者の方とで協力して実施しました。
結果的に、会と当事者の方とのコミュニケーションや協力が図れたことは良かったと思います。
散髪コーナー自体の需要も高く、残念ながら今回手伝ってくださった当事者の方はもう札幌を離れてしまいましたが、
できれば今後も続けて企画にしていきたいと思います。
毎回、生活保護を希望する方が相談をしていくうちに出てきます。
今回は16名おり、学生・市民のボランティア7名が2ヶ月弱かけて区役所・病院への同伴をし、居宅保護、施設保護、入院保護等につなげました。
当事者の需要に対し、ボランティアの数は必ずしも足りていないのが現状です。
同伴に行ける人は意思・経験・時間などの点から限られてしまい、相談会の参加者が多くてもたくさんの同伴者がいるわけではありません。
今回も、同じ人が3人の同伴に行くなどの対応が迫られました。
ホームレスを取り巻く環境の変化によって、窓口の対応も会発足当初に比べればずいぶん親切に変わったということです。
しかし、当事者ひとりで行けば住所がないからと行って追い返されることに代わりはなく、
わずかですがアパート情報を持っているボランティアがねばり強く交渉するのとでは結果が大きく変わるのです。
反省会では特に、支援者の参加者が増えており、相談会では人手が余っている問題について話されました。
参加者を制限するなどの意見も出されましたが、ホームレス問題について多くの方に関心を持ってもらうのには
相談会はもっともアピールできる場だということで、当日のみの参加者にできるだけ事前の説明会に来てもらうこと、
労福会の運営側で係を増やすなどして対応しようということになりました。
昨年12月に行った年越し健康まつりの大規模な健康診断以来、当事者の方から少しずつ、
身体の異常を訴えることが増えてきていると言われます。
労福会がこれからも信頼を得て当事者のみなさんの助けになれるといいと思います。
文:椎名結実
健康相談部門報告
今回の健康相談は医師1名と学生3名が担当し相談者は合計で19名でした。
このうち医師相談は13名であり、残り6名は血圧測定と尿検査のみを行いました。
医師相談13名のうち、精査あるいは治療が必要と思われたのは 5名で、
その内訳は高血圧傾向 3名(40代 1名、50代 2名)、上腕可動制限 1名(60代)、特定疾患(全身性エリテマトーデス)認定者 1名(50代)でした。
特に、高血圧者のお一人はその血圧値が簡易血圧計では測定不能なほど高値を示しており、早急な医療機関受診が必要と思われました。
一方、現在のところ特に問題はなかろうと判断された残り 8名の中に、結核既往者(治療済、現在症状なし)が 1名(60代)いますが、
苛酷な生活の中での再発がやや心配されます。また、感冒様症状があった 1名に市販風邪薬を提供しました。
他に、足のむくみを訴える方が 2名いましたが、いずれも軽度なため、経過観察としました。
文:芳賀光治
2003年度夏季概数調査結果の報告−野宿者概数は88人でした
7月5日(土)に、札幌市各所で路上生活者の人数確認調査を行いました。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、この調査は四年前から毎年の夏と冬の二回実施しているものです。
今回のこの調査は、会員や有志の方とともに行いました。
これまでは主に第一回、第二回調査と二回に分けて調査を行ってきましたが、
今回は調査参加者の人数の都合やその負担のことも考えて、調査は午前?時からの一回のみの実施としました。
調査方法についてはこれまで通りです。結果は88人でした。例年までの調査と比べて大きな変動は見られませんでしたが、
参加者の人数にも限界がありますし、あくまで当時者のいる可能性の高い場所を絞って行っているため、
実際の市内路上生活者はもう少し多いことも考えられます。
参加者の感想
山本侑(北海道大学薬学部1年)
僕は人数確認調査に参加するのは初めてで、院生の方と二人ですすきの、中島公園をまわりました。
7月といってもかなり肌寒く、あまり治安の良いとはいえない早朝のすすきののビル内を何軒も見まわるのは思いのほか大変なことでした。
人数調査なので、特に話を聞いたりすることもなく、次回炊き出しのビラを渡すくらいにしか当事者の人と関れなかったのですが、
普段彼らが寝ている場所を見てまわったり、院生の方の話を色々聞いたりしたことは自分にとって良い経験になりました。
新井元規:北星学園大学4年生
この日、私は初めて人数調査に参加させていただいて何人かの方とお話しさせていただいたのだが、
あまり多くを語らない人、いろんなことを話してくれる人、中には携帯電話を所持している人もいて、
色んな人がいるのだということを実感した。
その中でも印象的だったのは、アピアの地下通路で荷物を整理していた男性であった。
その男性は40代前半位で、服装も比較的軽装で路上生活歴は浅いように見えた。
少し離れた距離から見ていたので実際に話はしていないのだが、
その男性は地面にしゃがみこんでバッグの中身を整理しているように見えた。
しかし、しばらくしてもその男性はずっと同じようにそこにしゃがみこんでバッグの中身を整理していた。
バッグは一つだけでそれ程大きいようにも見えなかったので、どうしてそんなに時間がかかるのだろうと思っていたのだが、
よく見ているとバッグの中身を出してはまた元に戻すという行為を繰り返しているようであった。
一見意味のない行為のように見えたが、考えてみるとその男性は
「地面にしゃがみこんでずっとバッグの中身を整理しつづけるしかないほど」混乱していたのではないだろうか。
或いはこれから何をしていいのかがわからなかったのではないか。
話しをさせていただいた方の殆どは話し方も落ち着いた感じで、比較的厚手の服装や荷物の多さからも路上生活歴は長いように見えた。
その落ち着いた雰囲気の根幹には路上生活に対する一種の「慣れ」があるのではないだろうか。
誰もがはじめから路上生活であるわけではなく、人生のある時期に何らかの大きな困難(主に失業であると思うが)に遭遇して路上生活に至るのだと思う。
だから今は普通に路上で生活しているように見える人であっても、
最初の時期は路上で生活するということに対して(今まで住んでいた住居を失うのだから)様々な不安があったと思う。
今路上で生活している方々は様々な不安や精神的な混乱を経て、今現在路上で生活しているのだと思う。
札幌市との懇談について
昨年施行されたホームレス自立支援法に基づき、札幌市でもホームレス対策をすすめていくそうです。
それに先立って、日ごろからホームレスの支援活動を行っている方々の意見を聞きたいということで、
7月31日、労福会含め3つのホームレス支援団体と札幌市保護指導課との間で意見交換会が行われました。
この「意見交換会」のなかで当会は以下のような意見・要望を出しました。
生活保護・医療等について
- 役所の窓口の対応が悪いので改善してほしい。
- 生活保護受給後のケアをしてほしい。
- 検診命令の運用の仕方を改善してほしい。
- (入浴施設などで)路上生活者がよい衛生状態を保てるようにしてほしい。
- 救護施設から生活保護へとつなげるやり方は限界がきていると思う。
救護施設に入所するのに1ヶ月以上待たなければいけない場合がある。
住居について
- 札幌は寒冷地なので、せめて冬だけでも路上生活者が暮らせるような施設を用意してほしい。
- 敷金や保証人なしで契約できる民間のアパートが少ない。
就労について
- 求人の絶対数が少なく、路上生活者が自力で求職してもほとんど職をみつけられない。公的就労で賄うことはできないか。
その他
- 支援団体が実施している炊き出し等の現場に参加してほしい。
- 大通り公園のステージが立ち入り禁止になったが、無理に排除するようなことはやめてほしい。
これに対し、札幌市側は基本的に「限られた資源を効率的に利用して、今後これらの問題に対応していきたい。
しかし、現時点で具体的なビジョンを示すことは難しく、炊き出し等の現場に参加する、といった可能なことからしていきたい。」
という態度をとりました。今回の話し合いでは若干物足りない印象も受けましたが、
次回以降の話し合いでは札幌市の具体的な路上生活者対策案を聞くことができるかと思います。
いずれにせよ、路上生活者の自立を支援するために、行政との連携は必要不可欠なものであるので、今後よい連携がとれることを望みます。
文:寺嶋祐一
7月12、13日全国地域・寄せ場交流会報告
2年前から労福会が参加している、全国地域・寄せ場交流会に今年は事務局長の安部、副事務局長の椎名の2名が行ってきました。
第20回を迎えるこの交流会には、全国から47の支援団体が参加し、労福会は日本最北の参加団体でした。
東京を中心とした関東圏、大阪を中心とした関西圏からの参加者が7割を占めました。
寄せ場交流会の主要な話題は、昨年の七月に制定されたホームレスの自立に関する特別措置法についてでした。
初日の全体会では自立支援法の骨組みを作った静岡大学の笹沼先生を中心に、
この法律に基づく厚生労働省の基本方針案について討議しました。
翌日の全体会でも、自立支援法がどう運用されるかについて地域からの紹介を聞いた後、
支援団体は全国的に基本方針案に対して問題点を指摘し、法律のよりよい運営を行政にさせていこうと意見を一致させました。
分科会では、安倍が「もっと自立支援法」、椎名が「生保と医療・福祉」の分科会に出ました。
「もっと自立支援法」では、全体会に続いて自立支援法・基本方針案についての話がされました。
「生保と医療・福祉」では、各地域の生活保護に至るプロセスを紹介し合いました。
路上生活者の多い東京・大阪では、各区役所での対応が様々であるなどの共通の問題点を抱えていたり、
路上からの通院が可能であったりと札幌とは違う運用がされていることを知りました。
夜は、東京の支援団体が製作した「あしがらさん」という映画を見ました。
ある路上生活者が生活保護を受けて共同生活をするようになるまでを追ったドキュメンタリーで、
路上にいたときにはあんなに無表情だった人が、こんなに優しい笑顔に変わるのかと感動しました。
一概に家で暮らす方が幸せとは限りませんが、安心して暮らせることは大切だなと思いました。
夕食後の交流会では、規模が札幌と同じくらいの静岡の支援団体と交流しました。
私たちと同様、学生が中心で支援をしている静岡では、路上生活者どうしで団体を作り、支援団体と協力して活動をしています。
札幌でもそんな人材がいればできるかもしれません。
参加者は学生からおじいさんまでいて、若い人が意外に多かったです。
新宿で支援をしている10代の人たちと意気投合し、ホームページ等で交流していこうと話しました。
会場には韓国の参加者もおり、ホームレス問題で国際交流ができることに驚きました。
様々な視点からこの問題に取り組んでいる人に会えて、いろいろと考えさせられた2日間でした。
文:椎名結実