ともに生きる No.11 (2004年12月4日発行)

『10月2日炊き出し・総合相談会 11月6日炊き出し報告』 北海道大学理学部3年 嶋田宇大

今回私は10月2日と11月6日の炊き出しの企画責任者をやりました。
責任者という仕事は炊き出しの全体を常に把握しなければならないので、
その仕事を通じて自分のホームレス問題に関する視野を広げることができ、この仕事をやって良かったとつくづく思っています。

10月2日は労福会が炊き出しを担当し、札幌市は健康診断、就労相談、生活福祉相談などの総合相談を担当するという共催形式で行いました。
会場には74人の野宿者が参加され、健康診断には41人が参加されました。
この日の炊き出しは、私が慣れないためか、少しお堅い雰囲気になってしまいました。
また会場の隅でただ腕を組んで立っているボランティアを出してしまい、
おじさんにとっては管理されているようで居心地悪くさせてしまったのではないかと反省しました。

そこで、そのような反省を生かして11月6日の炊き出しは「温かい雰囲気づくり」をテーマに、
事前説明会や当日の打ち合わせでそのことをよびかけ、おじさんとコミュニケーションをとることを大切にする努力をしてみました。

そんな努力が実り、11月6日の炊き出しには64人の方に来ていただき、全体的に温かい雰囲気でできました。
この日は前回炊き出し時の健康診断の結果を配布し、NPO法人・日本理美容福祉協会の方々には散髪をやっていただき、
いつも混む散髪コーナーもスムーズに行きました。学生がよく動いてコミュニケーションをとり、管理っぽくもなく、
係り間の連携もうまくいき、病院と役所への同伴も15人の方にできました。

この日は人数の減少には歯止めがかからなかったものの、この温かい雰囲気はおじさんにも十分伝わったと思うし、
人数減少にはまた別の理由もありそうで、市内には依然として100人以上の野宿者がいると言われているので、
もっと多くの野宿者の方に足を運んでもらえるよう、次回以降に経験を生かしていきたいと思っています。

そして私は、今回まわりで温かく支えてもらった仲間とともにこれからもこの活動を積極的に続けていこうと思っています。よろしくお願いします。

『ボランティアの声 炊き出し』北海道大学教育学部3年 菅 洋一

労福の路上生活者への炊き出しに初めて参加してから約1年ほど経ちます。初めて参加した時の感想は、
「路上生活をしてても、みんな普通の人なんだ…」というものでした。それまでは路上生活者というと、
「世間に対して恨みを持っている」とか「何となくいじけた感じ」というイメージを勝手に持っていましたが、
その予想と裏腹に、炊き出しにやってくる多くの人が親切に接して、お礼を言ってくれたりするのです。
予想していた人間像とのあまりのギャップに、正直驚いてしまいました。自分以降初めて参加する人の感想も聞いてみると、
やはりみんな同じように驚いています。路上生活をする人と接する機会など普通に生活しているとまずありません。
そのために彼らを異人扱いして、偏見だけが一人歩きすることが少なくないです。そして、自分もそんな見方をしていた一人でした。

1年たって参加する回を重ねましたが、今はどうでしょう?今はおじさんたちが気さくに接してくれることに違和感は感じません。
自分の中での大きな変化です。しかし、路上生活を強いられている人がいるという変わらぬ現実も同時に存在しています。
社会全体で向き合わなければならない問題として誰もが認識する必要があると思います。ともに生きてる人なんだから。

『ボランテイアの声 炊き出し』北海道大学経済学部3年 森脇 翔

11月6日の炊き出しの日、炊き出しが終わった後の反省で「路上生活者の人も普通の人とかわらない事が分かった。」
というような感想が多く聞かれた。「むしろ普通の人よりも、いい人でびっくりした。」という人までいた。
私も、7月に初めて炊き出しに参加させてもらったとき、同じような印象を受けたことを覚えている。
そして同伴をしてみて、その印象はさらに強くなった。恥ずかしながら、以前の私は路上生活者の方達に対して、
「自分とは全く違った世界にいる人、なるべくして路上生活者になっている、可哀そうだけどしょうがない」
というような感覚を持っていた。程度の差こそあれ、11月の炊き出しで感想を述べられた方達も路上生活者の方達に対して
「自分とは違う世界の人」というような感覚をもっておられたのではなかろうか。だからこそ、あの様な感想が多くでたのだと思う。

最近まで、私は労福会の活動のようなボランティア活動は、大変意義のあることで素晴らしいことではあるが、
対症療法であり問題の根本的な原因療法にはならないと思っていた。しかし、支援活動を実際体験したり、
活動を広報したりすることで「自分とは違う世界の人」という感覚を捨てたり、他の人がその感覚を捨てる手助けができれば、
問題の根幹に対しての治療になるのではないかと思うようになった。世の中では多くの人達が路上生活を強いられており、
それよりも遥かに多くの人達がそれを黙認している。迫害する人までいる。そんなことができるのは、
多くの人達が路上生活者のことを自分や自分の家族、知人とは違ったカテゴリーの中にいる「違う世界の人」と考えているからではなかろうか。
人種差別やその他の多くの差別がそうであるように、人間は自分と違ったカテゴリーの人間とわかると、いとも簡単に冷酷な行動がとれるようになる。
逆に家族、知人等の自分と同じカテゴリーにいるはずの人間が苦境にたたされていれば、問題と感じる。
つまり、路上生活者を自分と同じカテゴリーにいる「普通の人」と考える人が増えれば、路上生活者を黙認する人も減り、社会の意識も高まると思うのだ。
労福会の活動で「違う世界の人」といった感覚をなくすことが原因療法といったのはこういった理由からだ。

このようなことを通して、これからの労福会の活動により、社会が改善されていけばと、また、少しでも自分がその力になれればと思う。

『7月18日炊き出し報告』 北海道大学薬学部2年 山本 侑

7月18日に、生活健康相談会を行いました。企画の内容は、今までどおりの物資配布(おにぎり、豚汁、風呂券、缶詰、タオル、石鹸、歯ブラシ)、
健康相談(ボランティアの医師による)、マッサージ(マッサージ師の方4名が来て下さいました)、衣料品配布、生活相談コーナー、などの他に、
おじさん達にくつろいでもらうためにテレビを使ってビデオを流したり、
散髪で待っている間を利用した爪切りコーナーを設けたりと幾つか新しい内容を盛り込みました。
これまでは炊き出しの後に有志のスタッフが当事者の方と同伴をするのが慣例になっていましたが、
この時は学生の試験期間と重なっていたりと、同伴をできるスタッフの数が集まらなかったために、同伴は行わない方針をとりました。

はじめて会報を読まれる方のために簡単に説明しますと、同伴とは、スタッフが、希望した当事者に付き添って区役所や病院へ行く事です。
その目的のほとんどは生活保護の申請です。

当日は、106人の当事者が参加し開場後は市民会館は人で一杯になりました。
しかし、この時は物資をもらい、ご飯を食べ終えてしまった後にそそくさと会場を後にする方が目立ち、
1時間もすると普段の半分位の方しか残っていないという状況でした。この事は、会の活動の一つである同伴が、
我々が思っていた以上に当事者の支えになっており、その需要があったという事を意味しています。
ただ、同伴という活動は場合によってはスタッフにも相当な負担になるうえ、
人数上の都合で特定のスタッフに沢山のケースを依頼してしまう、という問題点があり、
過去にも幾度も議題に上っていました。この時の反省会の話題にもなりましたが、
次は活動に興味を持ち同伴して下さるスタッフを出来るだけ増やして、無理の無い活動をしよう、
ということになり、いろいろと考えさせられた炊き出しになりました。
その他の点でいえば、やはり散髪コーナーが大人気でした。
ここ数回の込み具合から、並ぶ時混雑しないように整理券を配布したのですが、
これがうまくいってスムーズに順番待ちをしてもらう事ができました。
この時に初めて試みたテレビについては、数人の当事者がのんびりご覧になってた程度でしたが、
手間も大してかからないので機会があればまたやることにもなりそうです。
また、爪切りコーナーについてもあまり需要があったとは言えませんが、今後も続ける事になりそうです。
炊き出しも回数を重ねて、当日に大きな混乱がある、などと言う事は最近なくなりましたが、
当事者により良い支援をする炊き出しを行うということを考えると、
同伴の事を筆頭に課題は沢山あるという事を感じさせられた企画であったと思います。

『9月11日人数確認調査』 北海道大学経済学部3年 寺嶋祐一

人数確認調査結果 〜 2004年9月11日実施 ※()内は03年冬
調査場所人数
札幌駅・駅前バスターミナル40 (29)
大通・狸小路40 (44)
ススキノ0 (0)
中島公園など市内主要公園7 (1)
地下鉄南北線0 (1)
地下鉄東西線0 (0)
地下鉄東豊線0 (0)
JR沿線市内主要駅0 (1)
豊平川河川敷3 (15)
合計90 (91)

「労福会」は発足以来、路上生活者の人数確認調査を行ってきました。
どのような場所でどのくらいの方々が生活を送っているかを把握し、支援活動に活かしていきたいと考えるためです。
04年9月11日の調査は、札幌市からの委託を受けて行う、という形になりました。調査には市の職員も参加されました。
早朝、二人一組で市内各地に出向き、目視で年齢や性別などを確認するという調査方法がとられました。
一晩中歩き回っている方や建物の中にいる方も相当数いらっしゃると考えられるため、実際の人数は調査結果よりも多いと考えられます。

調査結果からわかることとして、第一に夏と冬とで全体の人数がさほど変わらないということがあげられます。
これは厳しい冬の中でも夏と変わらないだけの方が路上生活を強いられていること、
また40人ほどがこの間に生活保護を受給し「脱野宿」を果たしていることを考えると、
新たに多くの方が路上での生活を余儀なくされたということがいえます。
第二に豊平川河川敷で生活している方が減少しているということがあげられます。
昨年度実施された河川敷工事の際に、市が退去命令を出したためだと考えられます。
このとき、自主的に退去された方や生活保護を受給された方が数名いました。

調査を続けるにあたって、事前の情報収集や調査方法を見直すことで調査の精度をいっそう高めていきたいと思います。

『ボランテイアの声 生活保護申請同伴』 北星学園大学社会福祉学部3年 飯原 小百合

私は、10月の炊き出しに学校の先生の紹介で初めて参加しました。
思っていたよりも、路上生活をしているおじさん達は、普通のおじさんだったので少し驚きました。
また、小さなきっかけで路上生活に至ってしまうことを強く感じ、決して他人事ではないのだと思いました。

11月の炊き出しにも参加し、初めて同伴もしました。同伴では、病院に行って医療ソーシャルワーカーと関わる機会がありました。
その時の医療ソーシャルワーカーの対応が決して納得できるものではなく、
おじさんが「もういいから死にたい」と言ったりして大変でした。
私は、将来医療ソーシャルワーカーになりたいと考えていて、学校でそのための勉強をしています。
そのため、今まではソーシャルワーカー側の視点で考えることの方が多く、
今回初めて利用者側の視点でソーシャルワーカーを見ることになり、改めて、人を支援していくことの難しさを感じました。
その1週間後におじさんが入院するのに同伴したのですが、おじさんは、私に「ありがとう」と何度も言ってくれ、
2回程電話もしてきてくれました。私がおじさんに何をできたのかはよくわかりませんが、
おじさんから多くのことを学びました。将来についてなど、よく考える機会にもなりました。
今後も、できる範囲でこのボランティアを続けて行きたいと思います。

『ホームレス支援団体交流会および道との意見交換会について』 事務局長 高柳 晴香

8月25日に行われた交流会・意見交換会は北海道社会保障推進協議会の事務局の方を中心に、
札幌、函館、旭川、苫小牧で活動を行っている支援団体も参加して行われました。
まず、道庁との意見交換会では保健福祉部地域福祉課地域福祉推進グループの主事の方が受け入れ窓口となり、
さらにその他の担当部局も参加して行われました。道からはホームレス施策についての説明が、
各地の支援団体からは活動概要や抱えている問題(生活保護、住居、雇用など)が出されました。

『ボランテイアの声 生活保護申請同伴』 市民ボランテイア 眞鍋 千賀子

労福会は、札幌市の路上のおじさんに、「炊き出し・生活相談・健康診断」を年に少なくとも5回行っています。

私は、おじさん達と話をしたら、困ったこと苦しいことがあれば聴き取って、希望のある方に生活保護申請の同伴をしています。

役所の保護一課の生活保護相談窓口には、市民のいろいろの人が相談に来ていますが、
その中で路上のおじさんの状況は困難を極めている立場です。その時点でおじさんの「人生」に、私は関わることになります。

おじさんのプライバシーは口外しませんよ、と約束した同伴です。
冬の冷たいときには凍った食事が特に苦痛‥‥、自立したいが住所もお金も無い
(ほとんどの人が、10円とか20円とかの所持金)というおじさん達です。

おじさんの身になって申請するのは、現実の悲惨さを目の当たりにする時もあり、重い作業です。
又、居宅後のおじさん達は、まだ生活を自立させているというのには半端で、悩みを抱えてしまいます。
ですから私は、その後も労福会に相談をし、信頼を寄せてくれているおじさん達に「さあがんばりましょう、一緒に」と言います。

私は、会の活動の姿に、厚みが出てきたと感じています。それは、多くの学生が同伴をするようになって来たからだと思います。
学生は、おじさんの「人生」と向き合うことになり、おじさんの為に時間を使い、心を動かして考えるようになって、支援がより具体的になっています。

今、「活動中」の労福会です。

おじさんにとって頼れる「労福会」です。

人間関係の貧しさもおじさんの貧しさの一つ、ですので同伴をすることは労福会の大切な一つの活動です。