『新事務局長挨拶』 事務局長 高柳 晴香(北大教育学部2年)
皆さんこんにちは。今年度事務局長をやらせていただきます高柳晴香です。1年間どうぞよろしくお願いします。
さて、会が発足して6年目となりますが、炊き出し、人数調査、夜回りなど
1年の大まかな活動の流れはほぼ出来上がっているのではないかと思われます。
そこで今年はこの活動の流れに乗りつつも、当事者を取り巻く状況や会の活動を客観的に見つめなおす機会を積極的に設けていきたい
と考えています。さらに今年度は札幌市や他の団体の方々と協力し、互いの良いところを出し合いながらこの問題に取り組んでいこう
という話も出てきています。実際に5月29日には、札幌市や他の支援団体(ハンドインハンドさん)の方々と炊き出しを行いました。
(詳しい報告は後のページにあります。)ただし会の活動が広がりを見せていく一方で、
会の活動の運営といった事務的な作業に追われて当事者との関わりが薄くならぬよう夜回り等を行い、
当事者と関わりを持ち続けるという会の基本スタンスを忘れずに活動を続けていきます。
私自身としては多くの人に野宿者のことについて知ってもらいたいです。私はこの会に入ってまだ半年程度ですが、
野宿者になるということは誰にでも起こりうる、つまり当人の責任だけでは片付けられないことなのではないかと感じています。
ですからより多くの人とこの問題について考え、野宿者に対する理解を深めることは大切であり、
また理解が広まれば野宿者を取り巻く環境にも変化が現れるのではないかと思うのです。
以上のように今年度も労福会は地道に活動を続けていきます。皆さん、是非ご協力をよろしくお願いします。
『5月29日炊き出し・総合相談会報告』 寺嶋 祐一(北大経済学部3年)
今年度初めての炊き出しが、札幌市と支援団体と共催という形で、5月29日に行われました。
労福会が炊き出しを担当し、札幌市が総合相談会ということで健康相談、就労相談、法律相談、生活福祉相談、精神保健相談を担当しました。
炊き出しでは従来どおり食事と物資(入浴券、タオル、歯ブラシなど)を提供しました。
また、ハンドインハンドの方々のご協力により衣類の配布も行うことができました。109名の当事者の方が炊き出しに参加しました。
ハローワーク札幌や区の保護課など多くの機関の方が参加してくださった総合相談会には、30名の当事者の方が参加しました。
このような相談を行うことで、当時者の不安や悩みを幾分でも和らげることができたと思います。
中でも健康相談や生活福祉相談、就労相談の利用者が多く、当事者の方はアドバイスを得られました。
「炊き出し・総合相談会」の後、ハンドインハンドの方々のご協力を得て、生活保護を希望する方に対する同伴を15件程、行いました。
ボランティアが区役所等へ同伴し、居宅保護や施設保護に至りました。
さて今回の「炊き出し・総合相談会」には新しいボランティアの方々や各機関の方々が大勢、参加してくださりました。
また、札幌市と共催する形で炊き出しを行うのは今回が2度目であり、当事者の方々にはもちろんのこと
市民の方々にもアピールできたのではないかと思います。しかし、いくつか課題も残されていたようにも思います。
役所に対して抵抗のある当事者が未だに多くいらっしゃるようであること、役所の方の路上生活者支援に対する気持ちに個人差があること、
前回の「炊き出し・総合相談会」から改善、または拡大されている部分があまり見られなかったことなどが挙げられます。
10月に予定されている次回の「炊き出し・総合相談会」ではこのような点を意識していきたいと思います。
『炊き出しの感想』 篠原 睦(北大教育学部2年)
わたしが初めて労福会の炊き出しに参加したのは去年の12月のことだ。
その時はホームレスの方と関わりあうこと自体が本当に初めてで、どんなふうに声をかけていったらよいか分からず、
ほとんど役に立てずに終わってしまったように思う。でもその時、労福会の炊き出しというのは、
私と同じような普通の学生たちと市民の方たち、そしてホームレスの方たちが一緒になって語り合い、助け合う、
ひとつの「きっかけ」になる場だなあと感じた。機会があればまた活動に参加したいと考えていた。
そして2回目の参加となった今回の炊き出しでは、「こんにちは。お茶、いかがですか。」
「普段はどの辺りで生活をしているのですか?」「冬は寒くて、本当に大変だったでしょう。体とかおかしくなりませんでした?」などと、
前回よりはかなりスムーズに会話を始めることができた。どんどん話を返してきてくれる元気でおしゃべりなおじさん、
ただうなずいて話を聞いているおじさん、北大の教授の著した本を読んだことがあるという物知りなおじさん、にこにこしたおじさん、
無愛想なおじさん…、ホームレスの方の人柄はいろいろだけど、
話しているうちになんだか近所のおじさんと話しているかのような気持ちにさえなった。
町で見掛けるホームレスの方と話すことは、普段の生活の中ではなかなか難しい。
多くの人は無意識であれ意識的であれ、ホームレスとの接触を避けようとしていると思う。
路上で生活をする肉体的な厳しさはもちろんのことだが、それ以上にこのような社会からの疎外感や孤独感は、
当事者にとって本当に辛いものだろうなあと思う。
たくさんの人がこのような炊き出し等の場に参加して、心の壁みたいなものを少しずつでよいから取り除いていけたらいいなあと思った。
それから、行政や制度のことに関してまだまだ無知の私だけれども、自分に出来ることを少しずつやって、
ホームレスの方の自立を私なりに応援していきたいと思う。
『炊き出しの感想』 世良 迪夫(北大工学部1年)
私は、今年度から労福会に入り、今回初めて炊き出しに参加させて頂きました。
炊き出しでは、物資の調達とそれを手渡す仕事のお手伝いをしました。
今までこのようなボランティア活動に参加したことがなかったこともあり、新鮮でよい経験を得ることができました。
また、札幌におけるホームレスの現状を知らされました。
まず、当日の人の多さに舌を巻きました。開始からどっと人が詰めかけて、そのすべてに物資を手渡すのが大変でした。
私は物資係のなかでも単に風呂券を渡す役目でしたので、ぶた汁をよそって渡している方々よりは楽ではありましたが。
会場に入ってくる人たちの顔を見ていると、どこか冷え切った感じの表情が多く、
そんな人たちがこの後ろにもまだたくさん居るのだなと思いつつ、風呂券を一枚一枚、渡していました。
十数分ほどで人の波が収まった後、一人のホームレスの方とお話しすることが出来ました。
これまで夜回りに何度か参加して、実際に近くで接することはあったのですが、じっくり落ち着いてお話ができたのはこれが初めてでした。
そのお話の単語一つずつがたいへん重く、それもほんの一部ではあるでしょうが、人生と生活していくことの厳しさを教わりました。
特に印象に残っているのが、「今までで何が一番大変でしたか?」という問いに、「毎日が大変だよ〜」と答えられたことです。
その後、別の人で生活相談の付き添いもさせて頂きました。その方はつい最近ホームレスになられたばかりで、
それなりに高い年齢であるにもかかわらず、非常にしっかりした方でした。よって、付き添いの役目はほとんどなく、
むしろ私が生活事情を聞くことができ、勉強になりました。また、あまり関係ないですが、
書類に書いた字がきわめて達筆で、単純にすばらしいと感嘆もしました。
付き添いを終えた後は、特に何もすることがなく手持ちぶさたな時間を過ごしていて、
もうちょっと何かできなかったのかと思います。あれほどたくさんの人がいたのに、
二人だけしかお話しできなかったのは、少々もの足りない気がしました。
そして炊き出しを終え、今まで以上にホームレスについて見て、知り、感じることができました。
次回以降の炊き出しも意気込んでいき、ホームレスの方々を支援し、
そ
れと同時に自分自身の労働・福祉に関する考えを深めていきたいと思っています。
『就労支援の同伴』 眞鍋 千賀子(市民ボランティア)
平成14年8月7日、ホームレス支援に関する特別措置法が10年間の限定を条件に施行されました。
札幌市では、「全国のホームレスさんに行政のネットがかかっている。自立支援法を受けた市の対応は、
生保を柱としていくことが当面の施策です」ということで、今までにない支援が始まりました。
「就労可能な者に対する施策」という、就労ことで、就労による自立の意志のあるホームレスさんに、
救護施設(札幌明啓院)への入所を実施して、概ね3ヶ月を目処に、施設の担当指導員に指導、援助をうけて、
就労し自立できるよう支援する、という方法です。
今年の5月29日の生活総合相談会に見えた35歳のTさんは早速この方法に申し込みました。
会場でのハローワークの相談員にも「就職は難しくない」と励まされました。Tさんの話し声も段々と自信に満ちてきて、
「自分はやってみます。がんばりたい!」ということで、6月1日に東区役所で手続きを済ませ、明啓院に向かいました。
この方は、路上生活1ヶ月の方で、ホームレスの生活に戸惑っていたら、このチャンスに出会ったのです。
彼の意欲がわいてきて、声が生き生きしてくるのを感じて、同伴している私も笑顔…でした。
『働く場があるということ ― Kさんの同伴からー』 中山 冶光(北星学園社会福祉学部2年)
6月2日。Kさんの生活保護申請のため、東区の福祉事務所にSさんと同伴した。
今
回同伴させてもらったKさんは、路上生活9年の男性。5月29日の生活相談で、自分は働きたいのに、
今までいっていた人夫貸しの社長が代わって仕事がこなくなった事情。ある職種の一級技能資格と大型自動車免許をもっていること。
住所がないため仕事につけないので、住所をつくり働きたいこと。そのため、生保を受けたい。
と、「働きたい」気持ちをハッキリ伝えていた。当日福祉事務所は、Kさんが訪れると即、就労支援の方向で動いてくれた。
この日は支援センターが既に満杯で、ほかの救護施設に緊急一時保護が決まる。翌日、Sさんが再度同伴。Kさんは施設に入所された。
その後、6月11日の事務局会議でぼくがKさんの同伴を書くことが決まった。
そして、6月13日朝「北海道新聞」を読んでいると・・。
重度の身体障害を持ち、生活費を自分で稼ぎ自立生活をしている小谷晴子さんという方の話しが載っていた。
「障害者ならだれでも一度は、自分はこの世に必要のない人間なのではないかと考えるが、働くことで、そんな悩みから解放される。
働くことと自立生活は『生』そのもの」と。Kさんの同伴のことを考えていたからだあろうか。
ぼくは小谷さんのことばを読んで、寄せ場で仕事が切れて途方に暮れた日のことを思った。
その時の気持ちを、ことばにするのはむずかしい。でも、自分と仕事、そして社会との繋がりの理不尽な側面を実感したと思う。
その日、寄せ場には仕事を待つ男たちがあふれていた。
梅雨が明けたのに、求人は来ていなかった。日雇いを始めた頃だった。
この時期、仕事が切れることは聞いていた。しかし、聞くと体感するとでは違った。
仕事が消えた一日目の衝撃は大きかった。それでも、『明日は』と思えた。二日目も、あしたは、と。
そして、三日目、四日目・・・。そんな日々があった。ぼくには、この体験が少なくなかったのだが。
『炊き出し・同伴に参加して』 嶋田 宇大(北大理学部3年)
今回、炊き出しや同伴に参加したのは、1. ホームレスの方とお話をして、
何か役に立ちたい、2. 社会の現実をこの眼でしっかりと見たい、
3. 現状を変えるためには何をすればよいか考えたい、などの理由からです。
僕は同伴や対話で二人のおじさんからお話を聞くことができました。
共通していたのは、ホームレスになりたくてなったのではなく、
ならざるを得ないような状況にまで追い込まれていたということでした。
家がなければ会社に雇ってもらえないし、生活保護も働く見込みがなければ申請が通らない、
という社会の"矛盾"と言うか"対立"と言うか、そういうものを目の当たりにしました。
同伴したおじさんは、以前はパートで働いていたそうですが、パートの賃金の低さがその後の生活に影響を与え、
家を失うきっかけを作ってしまっているようでした。社宅に住んでいたおじさんは、その会社を首になり家がなくなりました。
二人の人生は、社会の貧しい部分の被害者であることを実感しました。というのは、ヨーロッパでは、
正社員に対するパートの賃金水準は50%以上確保されているのに、日本ではそれが50%をきっており、
こういう社会状況がホームレスの方たちを規定していると感じたからです。
日本では、解雇のルールがないということも影響していました。
こういう社会状況があるから、いくらホームレスの方の自立支援をやっても、次々とまた同じ状況が繰り返される。
今回の炊き出しでは、新しい人が何人もいたそうです。僕が対話した方は、家を失って一ヶ月でした。
「やっぱり路上生活は苦しい」、こうおっしゃっていました。
今回僕が同伴した方は、早めに行ったこともあり、何とか空いている施設に行けることになりました。
と同時に、それは最後の空きだったので、次から来た方はたぶん今回のように話は進まないんだろうなと思うと、悲しくなりました。
今後も労福に関わっていきながら、最初に書いた三つのことを考えていきたいです。