2003年度 総会資料

目次

  1. 今年度の活動概要
  2. 生活健康相談会報告
  3. 札幌市と共催した「炊き出し・健康相談会」について
  4. 生活保護申請同伴報告
  5. 他団体・機関との連携について
  6. 会計報告
  7. 今年度の課題と来年度の活動
  8. 私と労福会
  9. 来年度の役員紹介
  10. 巻末資料

1.今年度の活動概要(安部薫道/事務局長)

身を切るような氷点下の夜、毛布ひとつで路上にうずくまる当事者。
雪の降りしきる中、廃棄食品を求めてどこまでもさ迷い歩く当事者。
彼らの中には命の危険すら差し迫っている方もおり、現に今年度も餓死の事例が挙がっています。
彼らは昨日までスーツを着て会社で働く身であったり、建設現場で機械を操る身であったりしたのです。
それにもかかわらず、この不況の時代にさまざまな理由で路上生活を強いられるにいたってしまったのです。
私たちはこのような深刻極まりない現状を目の当たりにし、これでいいのだろうか?少しでも何かできないだろうか?
という発想から微弱ではありますが活動を立ち上げ、
たくさんの方がご尽力くださったおかげさまで今年、発足から5年を迎えることができました。

さて、この5年の間、私たちは当事者の「脱路上」のために何をすべきか、何ができるかを考え続けてきました。
そして試行錯誤しながら行ってきた活動は経験として蓄積してきました。
今年度はこのような経験を活かし、以下のような活動を行ってきました。

第一に、全4回の生活健康相談会を開催しました。暖かい屋内で毎回100人前後の当事者に、
食事や生活物資、健康相談、生活相談などのサービスを提供しました(参照:「2.生活健康相談会報告」)。
第二に、保護同伴を行いました。当事者が役所へ保護申請をしに行くにあたり希望する方にスタッフが付き添うという活動です。
この点、役所への同伴のみならず、病院、家探し、各機関・施設など当事者のニーズに可能な限り答える形で付き添いを行いました。
今年度は役所への保護同伴だけで70ケース以上の実績を上げ、多くの当事者につき保護受給が決定しました(参照:「4.生活保護申請同伴報告」)。
それから第三に、随時夜回りを行いました。これは2ヶ月に1度のペースでしか開催できない生活健康相談会の「間の期間」も
日常的に当事者と関わりを持ちつづけるためであり、また、健康面など緊急対応が必要な当事者を放置しないためという意味も持ちます。
第四に、日ごろの活動に活かすために2回の学習会を行いました。テーマは生活保護、
それから「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(自立支援法)」に基づく基本方針にそれぞれ設定し、
制度の理解・問題点に関する考察を深めました。第五に札幌市保護課との懇談会(行政懇談会)を2回もちました。
ここでは、路上生活者に関わる問題の所在を明らかにし、その解決のために適正に法を運用し、必要な措置を講ずるよう促しました
(参照:「5.他団体・機関との連携について」)。

以上のように、ここ数年私たちが行っている基本的な活動を今年度も継続して行ってきたわけですが、
ここで強調したいのが、今年度は行政に動きがあったということです。
そしてその象徴として行政懇談会の中で案が浮上した街頭相談が、
市と私たち市民団体共催の「炊き出し・総合相談会」という形で初めて実現しました。
行政が動き出したのは昨年秋に出された「自立支援法」に基づく基本方針の影響が考えられますが、
私たちはこういった行政の姿勢を評価し、経験・立場を活かして具体的施策を提言する役割を担っていくことになるでしょう
(参照:「3.炊き出し・総合相談会報告」)。

さて、今年度は旭川・函館で支援がスタートした年でもありました。現地の支援関係者との連携、ノウハウの共有が来年度期待されます。

ところで、ここ数年いわれている居宅生活者問題に関してですが、まずは一斉に年賀状を送付することでアクセスを試みました。
これは、脱路上後の居宅生活者の状況を把握するための第一歩として、
まずはここ数年整理されていなかった住所録を更新するという意味、
それからこちらの関心が持続して向いていることを知らせ、これからの関係づくりのきっかけにするという意味がありました。
中には深刻な生活状況を知らせる返事をくださった方もおり、問題の難しさを実感しました。

このように今年度を振り返ってみると、会の活動は拡大し、社会的役割・期待も増大してきていることが分かります。
多くの課題に関しては後ろの各パートに譲るとして、当事者のために会の活動を充実させてくれたのは養護老人ホーム静山荘さん、
民主医療機関連合会(民医連)など各団体の並々ならぬ真摯な姿勢で役割を分担してくださっている団体のおかげさまです。
また、名前を挙げずとも日ごろご尽力くださっている各団体の方にも改めて御礼を申し上げます。

2003年度の活動カレンダー

  1. 05月09日 第1回学習会
  2. 05月18日 生活健康相談会(1)
  3. 07月01日 会報「ともに生きる」7発行
  4. 07月05日 人数確認調査
  5. 07月19日 生活健康相談会(2)
  6. 07月29日 第2回学習会
  7. 07月31日 札幌市保護指導課との懇談
  8. 09月25日 札幌市保護指導課との懇談
  9. 09月27日 旭川出張炊き出し
  10. 10月01日 会報「ともに生きる」8発行
  11. 10月19日 炊き出し・総合相談会
  12. 11月15日 生活健康相談会(3)(フォローアップ企画)
  13. 12月13日 人数確認調査(市と合同)
  14. 12月21日 年越し夜回り
  15. 01月01日 居宅生活者に年賀状一斉送付
  16. 01月01日 会報「ともに生きる」9発行
  17. 01月24日 生活健康相談会(4)
  18. 03月07日 2003年度総会

※その他、随時夜回りを行いました。

2.生活健康相談会報告 (椎名結実)

今年度は、資料に示す通り全部で4回の「生活健康相談会」、及び札幌市との共催で「炊き出し総合相談会」、
旭川での相談会各一回を行いました。(「炊き出し総合相談会」について別項を交照ください。)
全体的には、どの回も当事者に迷惑をかけるような大きな混乱はなく、スムーズに実施できました。
以下では項目ごとに今年度の相談会を総括したいと思います。

(1)生活健康相談会の意義について

まず、相談会の目的についてですが、「当事者に温かく、安心して休める場を提供するため」
「生活に必要な物資を渡すため」「健康に関心を持ってもらう機会」「今後、労福会とつながっていくためのコミュニケーションの場」
「市民に活動をアピールするため」などでした。これらの目的は毎回の相談会でほぼ達成されていたように思います。
また、相談会は当事者にとても好評であり、開催するたびにそのニーズを強く感じました。
一方で支援者自身は、労福会のさまざまな活動の中で相談会がどのような位置を占めるべきだろうかといったことはあまり意識してこなかったと思います。
しかし今年度も終わりに近づいてきたころ、当事者のニーズ全てに応えるには人もお金も足りないということを
それぞれが活動する上で実感するようになってはじめて、相談会や支援の目的を考えるようになったと思います。

そして労福会設立当初とは異なり、札幌市内にいくつかの支援団体が設立された今、
労福会が果たしうる、そして果たすべき役割をとらえ直す時期に来ているのだろうと思います。
今年度の相談会は、10月の札幌市との共催を除いては特に画期的なことはありませんでしたが、
毎 回できるだけ当事者のニーズをくみ取って、定期的に、そして大規模に開催したという点で、
当事者・市民・札幌市の労福会への信頼を高めたものだったと言えるでしょう。

(2)当事者の参加数

今年度の参加数は、夏場において昨年を上回る数字を残しました。
(参照:表)私たちが昨年に引き続き今年も生活保護希望者の脱路上をサポートしているにもかかわらず、
相談会の参加者が増えています。それは第一に、札幌にいる当事者の人数が減っていないという現状、
第二に、すでに野宿から居宅に移った方も相談会に訪れていること、
第三に、労福会の脱路上サポート実績を聞いて、今まで相談会に来なかった当事者が来るようになったこと、
この三点が原因として言えるのではないかと思います。

まず、第一の点については巻末の資料@から分かるように、札幌市内で野宿する当事者の人数が昨年と変わっていないためです。
一方で、少なくとも脱路上した方の数は増えていると言えるでしょう。次に第二の点については、路上から居宅に移った人の中でも、
保護受給の生活では苦しいという理由で物資をもらいに来る方や、路上生活を続ける仲間と一緒に来る方がいらっしゃいます。
しかし、私たちは支援の対象を路上生活者だけではなく、ほとんどそれに近い生活をしている方も含めて考えているため、
彼らを相談会の場から追い出すことはしませんでした。なぜなら居宅に移った方が再び路上生活に戻ったり、
微罪を犯して日常生活ができなくなったり、というケースがあるからです。私たちはそういうケースに触れるたびに、
住む場所が路上か家か、だけでは計れないホームレス問題の深さを感じます。最後に第三の点については、
「友達が労福会に行ったら、アパートに住めた」という話を聞いて、初めはだめだと思っていたけれど生活保護を希望した、
という方々がいらっしゃいました。これは、労福会がだんだんと当事者の信頼を得てきた結果だと思います。
しかし同伴希望者が増加することによって、サポートする一部のメンバーの負担が大きくなるという問題にもつながってきました。

(3)相談会の内容について

[1] 物資配布について

今年度の配布物資・配布方法ともに、昨年度のやり方を受け継ぎました。
相談会での配布物資は、当事者のニーズに沿ったものであり、
当事者の生活自体に変化がない限りは当分必要とされるものばかりだろうと思います。
具体的には、風呂券、歯ブラシ、タオル、石鹸、靴下、缶詰、ヒゲそり、おにぎり、豚汁、衣料品を配布しました。

風呂券は、北海道公衆衛生浴場協会が発行しているもので、同協会に加盟している銭湯ならどこでも入浴できます。
予算と時期に応じて、毎回1〜2枚配布しました。おにぎり・豚汁は1月の相談会を除いて昨年と同様、
静山荘さんの調理室の方々に作っていただきました。1月に自分達で雑煮を作って実感しましたが、
静山荘の方に作っていただいたものはとても美味しく、毎回快く引き受けていただいて本当にありがたいと思いました。
衣料品についてですが、今年度は、寄付で頂いた衣料品が配りきれずに余ってしまったり、
労福会の保管場所がいっぱいになってしまって寄付をお断りするなどの状況が生まれました。
被災地に送られた衣料品が余りにも多すぎて自治体が処理に困っているなどのニュースを聞くと、
今後の衣料品寄付の扱いをどのようにするかを会として改めて考えるべきだと思います。

[2] 生活相談について

相談会では、労福会とのコミュニケーションも兼ねて、企画に来た当事者に
「最近どう?」「どこか調子悪いところはない?」などと声をかけます。
そこから、世間話でもいいし、何らかの関わるきっかけが生まれればよいと考えています。
実際に、そういった声かけから、当事者が抱えている様々な問題を持ちかけられることや、
健康相談を勧めてみたら病気が見つかった、などの事例があります。これも昨年同様に行いましたが、
今年度は、特に生活保護を勧めたわけではないのに当事者が自分から保護相談、同伴を希望してくるといった特徴が見られました。
これは労福会のこれまでの活動に、当事者が信頼を持ち、生活保護なら労福会に相談しようといった考えが広がってきているためではないかと思います。

[3] 健康相談について

5月・7月の相談会では労福会副代表の芳賀医師に、
10月・11月・1月の相談会では勤医協の医師にボランティアで診察にあたっていただきました。
11月の相談会は、前の月に大々的に健康相談会を開催したこともあって少なめでしたが、他の回は10名を超す相談者でした。
その中では高血圧・糖尿病から精神疾患まで、さまざまな疾患が見出され、緊急性の高い方については会のボランティアが同伴して、
生活保護申請のサポートにあたるように連携をとりました。特に1月の相談会では同伴希望者15名中13名が健康上緊急性を抱えた方で、
札幌の冬を屋外で暮らす人の健康状態は相当ひどいものだとの印象を受けました。
札幌のホームレス支援の中で、労福会の相談会は今のところ唯一健康相談のために医師が出てきてくれる場なので、
毎回きちんと健康相談を行う意義は高く、また、受診者が増えてきているのも当事者が健康に関心を持つようになってきた証しかと思っています。
このためか、今年度は「急に具合が悪くなって…」と事務局に電話が入るなど、「飛び込み」の同伴依頼が増えました。

[4] その他のコーナーについて

(4)支援者としての参加について

労福会に、あるいはホームレス支援に何らかの興味を持った方は、
その多くが相談会にボランティアとして参加します。今年度は、毎回3、40名の支援者が会場に来られました。
その中には、毎回企画の当日にのみ参加する人から、準備からその後の同伴までずっと関わる人、
初めて来て、これからどう関わるか考えようと思っている人まで様々です。
支援者にとって相談会は、(少なくとも今年は)活動の目玉であり、また誰もが気軽に参加できる開かれた場でもありました。
そして、当事者が笑ったり喋ったりしているのを身近に見るということ自体がめったにない経験なので、
会場があふれない限りはできるだけ多くの支援者が相談会に来るといいと思います。
なぜなら相談会は、ホームレス問題を市民へ直接アピールをできる数少ない場であると考えるからです。

しかし相談会に多くの支援者が集まる一方で、相談会の事前準備や、事後同伴になると必要な人手が足りず、
少数のメンバーに負担が集中しているという現状があります。
また、今年度は学生、市民、医師、理容師、弁護士、ソーシャルワーカー、按摩、代議士、教会、そして札幌市など、
非常に様々な人・団体が相談会に支援者として関わるようになりました。
相談会の当日走り回って頂いたり、特殊な問題で相談にのって頂いたり、置ききれない物資を預かって頂いたり関わり方もさまざまでした。
しかし、まだ、それぞれの力を十分には出し切っていない部分も多いと感じます。
相談会はホームレス問題に関心を持っている人たちが集まる場なので、
多様な支援者の力や特徴をもっとうまく生かし、互いに連携させることができたら、と思いました。

2003年度労福会生活健康相談会 および各種相談会
日付当事者数(昨年同時期の当事者数)支援者数内容健康相談生保同伴備考
15/18123名(98名)43名炊き出し(おにぎり、豚汁)、物資配布、生活相談、健康相談15名(風邪 8名/高血圧 1名/左足の腫れ 1名/目の病気 1名)7名おにぎり・豚汁が不足する/風邪が多い
27/19135名(109名)45名炊き出し(おにぎり、豚汁)、物資配布、生活相談、健康相談、散髪コーナー19名16名散髪コーナーが大繁盛
310/19122名(84名)30名弱健康診断(結核予防会)、総合相談(ハローワーク札幌、区役所保護課、札幌弁護士会)、炊き出し(おにぎり、豚汁)、物資配布15〜16名16〜17名札幌市との共催
411/1888名40名前後健康診断の結果配布(39人中25名に配布)、炊き出し(おにぎり、豚汁)、物資配布、健康相談、マッサージ、衣料品配布、生活保護相談コーナー、区役所・病院同伴調整3名13名衣料品の余りをどうするかが問題
51/2480〜87名(74名)39名炊き出し(おにぎり、雑煮)、物資配布、健康相談、衣料品配布、生活保護相談コーナー、散髪(15〜20名)、お楽しみ企画(41名)、区役所・病院同伴調整13名(糖尿病、高血圧、先天的障害 など)15名散髪コーナー・お楽しみ企画が大繁盛

3.札幌市と共催した「炊き出し・健康相談会」について (安部薫道)

2003年10月19日に、初めて札幌市と民間支援団体が共催する形で「炊き出し・総合相談会」が開かれました。
まず、流れは午前中に健康診断、お昼に炊き出し、午後から総合相談の順で進められました。
また、労福会のメンバーは見学を含め30名弱の方が参加し、民医連の橘さんをはじめ、関係するドクターも参加くださいました。
一方、札幌市側の体制としては終日、保護指導課の職員5名が対応にあたったのに加え、午前の健康診断には結核予防会などから15名程が参加しました。
それから午後の総合相談会には、ハローワーク札幌などから3名が出て就労相談をし、区保護課から6名が出て生活・福祉相談をしました。
また、札幌弁護士会の人権擁護委員会から3名が出て法律相談が行われました。なお、NPO「ハンド・イン・ハンド」さんの方4名も午後から参加しました。
ところで午前中検診を受けた当事者の方が約39名、お昼からの炊き出し時点で122名、午後からの相談を受けた方は延べ40名ほどでした。
それから保護同伴を希望する方が20名弱おり、翌週より労福スタッフとハンド・イン・ハンドが対応することになりました。
またその結果、大半の方につき生保受給が決定しました。
さらに、11月15日に健康診断の結果を受け渡すために行った生活健康相談会では88名の方が来場し、
そのうち検診を受けた方25名に診断結果を返却することができました。

この相談会は以下の点で評価できます。すなわち第一に、市が実態に直面する契機になり、多くの機関を巻き込むことができた点。
第二に、生保申請につき以前より柔軟な取り扱いを引き出すきっかけになったという点。
第三に、行政が,当事者のニーズを把握しようと努め,施策を行えばそれなりの結果をきちんと出すことができることを確認できたという意味で,
次の施策への期待が持てた点。また、多くのマスコミによって報道されたため、世間一般へのアピールにもなったと思われますし、
支援団体間の連携の観点からもプラスになったと思います。事実、この相談会以降、メディアを通じて会を知ったという方のアクセスが増加しました。

札幌市としてはこのような相談会を来年度以降も開催したいという話も聞いています。
今回、行政・市民団体の連携はもとより、行政内の各パート間、市民団体間の連携の重要性を痛感しました。
しかし最も重要なのは市民全体でこの社会問題を考え、動くことです。
当事者にとって真に価値ある選択肢を増やしていくには、やはりもっと多くの人間なり機関なりを巻き込んでいく必要があると思われます。

4.生活保護申請同伴報告 (寺嶋祐一/会計担当)

(1)生活保護申請同伴のまとめ

当会が路上生活者の脱野宿のお手伝いをさせて頂く際に、現段階で取りうる有効な手段として生活保護の申請があります。
市民の方々のご協力もあり、今年度生活保護の申請にいたった方は同伴した72名のうち52名でした。(昨年度は47名のうち31名) 
現状では,保護の申請のためには住所が必要で、その住所をどのように得るかが同伴において一番の問題となってきます。
また住所を得て生活保護を受けるまでの過程には大きく分けて三つの流れがあり、
一つ目は保証人や前金なしでアパートの契約をしてくださる大家さんの協力を得て直接居住地を得る方法(今年度は16件)、
二つ目は救護施設に一旦入所し、そこを住所にして最終的には居宅へと移る方法(同上25件)、
三つ目は検診命令をもらい診察を受けて入院をし、病院を住所に治療後居宅へ移る方法(同上11件)です。

しかし、救護施設に空きが無い、診察を受けても緊急入院の必要が無い、
また、ベッドに空きが無いということで住所の確保がスムーズに行かない場合が多々あります。
住所の他にも生活保護を受けるにあたって様々な制約が存在し、途中で保護を打ち切られてしまうというケースも生じています。
また、何度か保護を打ち切られている方が申請に行くと「信用できない」ということで申請が通りにくかったということもありました。
(※次ページ参考) 以上のように同伴の数は昨年に比べてかなり増えたものの、
依然として保護申請に至るまでには様々な困難が存在します。

(2)生活保護申請同伴の課題

第一の課題として今年度も生活保護同伴を行うのが会の一部の人々に集中してしまいました。
やはり同伴となると負担が大きくなる上に、今年度は同伴スタッフが少ないと言うこともあり、
去年以上に一部集中してしまいました。負担を減らすためにできるだけ男女2人での同伴を行うようにしたり、
1人の当事者を数人で取り次ぐように調整をしたりと試行錯誤したのですが、あまり上手くいきませんでした。
これに対し、同伴は炊き出しの後に集中しているので、毎回の夜回りの際に同伴希望を募ることで、
一時期に集中するのを避けられるのではないか、という案が最近あがってきています。
具体的には何も決まっていませんが、これが実現すれば、負担が軽減するはずです。

第二に、今年度、生活保護の学習会や、同伴の情報を共有する場を設けられなかった事が反省点としてあげられます。
このような話し合いは今まで保護や同伴に興味の無かった人にもある種の刺激になったり、
同伴している人も周りからアドバイスをもらったりするなど、精神的な支えが得られる場として有効に働くと思われます。

第三に、個人で行った同伴の記録の管理が今年度はおろそかだった事も今後の課題のひとつです。
同伴に行った人は毎回“記録書”に同伴の内容を書くことになっていたのですが、今年度はその事を徹底する事ができませんでした。
同伴を引き継ぐ際に、ある程度の情報がないと大変苦労します。

第四に、居宅生活に移った方のサポートについてです。
生活保護を切られて再野宿する人がいることや、居宅に移ることが必ずしも社会復帰には繋がっていない事も事実です。
今年度は居宅生活者との繋がりをもっと大切にしていこうという方針でしたが、
会全体としての活動は年始に年賀状を郵送した事にとどまり、その難しさを改めて実感させられた年だったと思います。
例えば、定期的に居宅訪問をしたり、手紙を書いたり、ケアの方法は幾つもあります。
会でできることはどのようなことか、という話し合いの機会を今年度はあまり持つことができませんでした。
これはすぐに明確な答えが出るような問題ではありません。考えていかなければならない課題だと思います。

参考:今年度の札幌市の「ホームレス」に対する生活保護の運用について

現在、札幌市においては「住所不定」状態にある方が生活保護を利用する場合、
基本的に本文にあったような三つの経路をたどります。
この生活保護のあり方については、大きな問題があるというのが当会の基本認識です。
というのは、入院治療が必要なケースはともかく、居所のある申請者と異なり野宿者の場合、
施設入所を強いられたり、申請前にアパートの部屋を確保することを求められたりすることにより、
申請や受給のハードルがとても高くなっているためです。
救護施設では、法定の利用者ではない野宿者(本来、救護施設は単身で生活することが困難な方のための長期利用施設です)は
施設内の仮設部屋で寝泊りすることになり、また、施設であるがゆえに外出等の制限を受けるなど、窮屈な滞在を強いられることになります。
さらに、お金に余裕のない方(野宿をしている皆さんの大部分)にとって申請前のアパート確保が如何に困難であるかはいうまでもないことです。

野宿者が生活保護を受ける時に、入院、施設入所、事前のアパート確保という条件が必要になってくるのは、
札幌市が依然として「住所(居所)の定まらない者には生活保護の適用ができない」というルールに従って生活保護を運用しているためです。
つまり、札幌にある三つの経路というのは、何らかの形で居所を定めた上で保護を適用するためのバリエーションであるといえます。
生活保護法また厚生労働省の自治体宛通達を読む限り、「居所の有無」は生活保護を受けるための要件とはいえないので、
上記のルールは根拠の薄い「慣行」として当会は理解しています。そこで、当会では市に対して、
居所のある申請者(通常の方)と変わらない野宿者への生活保護における対応を求めてきましたが、今年も態勢は大きく変わりませんでした。

ただし、今年度は、野宿者が申請前にアパートを確保するにあたり契約時に必要な資金を行政が供与するという前進もみられました。
当会が申請に関わった事例においても、既に数件の敷金等の供与が確認されています。
この動きは2003年夏に厚生労働省が自治体宛に出した通達にしたがったものですが、
保護指導課との懇談会で確認した限り、敷金供与について市はかなり慎重な姿勢をとっており、
すべての希望者に適用するというところには至っていません。

2003年度・生活保護申請の同伴事例
番号同伴時期結果1結果2備考
15月生活健康相談会相談救護入所
2検診命令救護入所通院
3検診命令入院
4検診命令
5救護入所居宅保護
6救護入所
7入院居宅保護
8検診命令入院
97月生活健康相談会入院
10居宅保護
11居宅保護
12居宅保護
13居宅保護
14居宅保護
15居宅保護
16救護入所居宅保護
17相談
1810月総合相談会救護入所居宅保護病気治療中
19検診命令
20入院居宅保護
21入院
22救護入所居宅保護
23就職
24救護入所居宅保護
25居宅保護
26居宅保護
27検診命令
28入院居宅保護
29居宅保護
30居宅保護
31救護入所居宅保護
3211月生活健康相談会入院
33居宅保護
34救護入賞居宅保護
35検診命令救護入所居宅保護(道生連の協力)
36救護入所居宅保護
37検査
38救護入所居宅保護
39就職市役所の紹介により
40救護入所
41検診命令
421月生活健康相談会救護入所
43検診命令
44救護入所居宅保護
45傷病の手当て
46入院居宅保護
47検診命令
48救護入所
49救護入所
50救護入所居宅保護
51救護入所居宅保護
52ハローワーク居宅保護
53検診命令救護入所居宅保護
54検診命令
55不明入院
56入院
57入院
58入院居宅保護
59救護入所居宅保護
60救護入所居宅保護
61救護入所居宅保護
62救護入所居宅保護
63救護入所居宅保護
64救護入所居宅保護
65救護入所居宅保護
66救護入所居宅保護
67居宅保護
68居宅保護
69居宅保護
70居宅保護
71名古屋の工場の寮へ
72相談苫小牧の兄のもとへ

5.他団体・機関との連携について (佐々木宏/副代表)

今年度も会員以外の方々に支えられ活動を進めてきました。
物資提供やご寄付、また活動に便宜をはかっていただくなど様々なご援助をくださった皆様に感謝したいと思います。
どうもありがとうございました。また、今年度は多くの団体や機関との連携なしには語ることができないくらい、
他団体・機関のご協力に支えられ活動してきました。ここでは、今年度の他団体や機関との連携について報告したいと思います。

札幌には現在、組織的に「ホームレス」支援を行っている団体が当会を含め3団体あります。
東京、大阪などでは支援団体間の交流・連携が盛んですが、昨年度までの札幌ではそれがないことが課題でした。
今年は、二つの支援団体、NPO「ハンド・イン・ハンド」さん、「みなずき会」さんと、札幌市主催の懇談会(後述)に同席しました。
みなずき会さんには、炊き出しの準備の会場を貸していただき(04・1月)。
またハンド・イン・ハンドさん主催の「ホームレス」問題のシンポジウム(03.4月)に参加させていだだきました。
さらに、ハンド・イン・ハンドさんとは区役所への同伴行動のケース分担も行っています。
今年度は、懸案であった支援団体間の連携が、団体レベルで始まった年であるといえます。
当会だけで札幌の野宿問題へ対応することは難しいので、各団体の個性を生かした連携を進め支援を効果的なものにすることは、
来年度に続く課題となります。
また、03年7月には全国の野宿者支援団体の交流会・『寄せ場交流会』に事務局長を含む2名のスタッフを派遣しました。
民間団体による野宿者支援の盛んな本州の実例から学ぶべきことは多く、
来年も当会のスタッフが本州へ視察・研修へ行く機会を積極的に作ることが望まれます。

次に、野宿支援団体ではないものの当会の活動に力を貸してくださった諸団体について報告します。
今年も養護老人ホーム・静山荘さんに、炊き出しの際の食事を準備していただきました。
生活健康相談会の報告にもあったように、静山荘さんが用意された食事は、参加者にとても喜ばれております。
静山荘さんとの連携では、こちらからの日程の連絡が遅れるなど不手際があったことを労福会サイドの課題として明記しておきます。

北海道民主医療機関連合会(民医連)さんも、古くから当会の活動にご協力いただいてきましたが、
今年度は民医連さんとの関係がさらに密になりました。従来の生活・健康相談会への医療専門家の派遣に加え、
同伴行動にもご協力をいただきました。また、旭川や函館における支援活動の立ち上げは、
当会の活動のノウハウと民医連さんの組織力によってなされたものです。
さらに、炊き出しの際の試みとして好評だった、散髪・マッサージコーナーに専門家を紹介してくださったのも民医連さんです。
適切な医療は野宿者にとって最も必要なニーズの一つです。来年度も引き続き、民医連さんとの連携が継続することを期待しています。

また、今年度から在札の弁護士グループ・人権擁護委員会さんとの協力も始まっています。
人権擁護委員会さんとは、6月に懇談会をもち、10月の総合相談会では法律相談を担当していただき、
12月には学習会のご案内(当会スタッフが10名程度参加)をいただいております。また、組織的な形には至っておりませんが、
当会が対応している野宿者の抱える法律的な問題について人権擁護委員会さんに関わる弁護士の方に、
相談に乗っていただいたケースもありました。多重債務や生活保護に関わる行政の不法な対応、
等に苦しむ方が少なくない野宿者にとって法律家のアドバイスや援助は、とても貴重なものです。
来年度も、弁護士さんほか法律の専門家の方々との連携がさらに深まることを期待しています。

最後に、今年度の札幌市ほかの行政機関との関係です。
昨年来、市の野宿者対策への姿勢が積極的になったこともあって、これまで以上に関係は深まりました。
行政機関との共催、委託で行われた活動は、@街頭総合相談会(03.10月)、
A10月相談会の健診結果通知会(一回目:03.11月、二回目:04.1月)、B野宿者概数調査(03.12月)です。
10月の街頭総合相談会は、他の箇所での報告にもあったように、行政が重い腰をあげて野宿者の多様なニーズに「総合的に」対応しようと、
役所のデスクや窓口を離れて外にやってきたという意味で、野宿者支援に行政がその責任を果たす大きな一歩となったと評価できます。
当会としては、行政がこのような姿勢を引き続き発展させていくことを切に願っています。
ただし、今年も、生活保護申請を希望する方が各区役所の保護課の窓口で理不尽な対応を受けることは少なくなく、
区役所の窓口レベルでの野宿者への対応の改善は、引き続き当会が行政に要求すべき課題として残っています。

こうした行政への期待や要求は、2003年7月以来2回、市・保護指導課が在札の支援団体を集め開催した懇談会の席上で、
また総合相談会の準備に関わる打ち合わせの際に、頻繁に行政へ伝えてきました。
少なくとも総合相談会の実施内容には、当会の意見をかなりの程度反映させることができました。
来る2004年3月25日にも来年度に向けての懇談会が予定されております。
しかし、行政への要求に関わっていえば、今年度は市長宛の要望書の提出(2000年冬に実施)のような形での公式な要求を行わず、
非公式な場で市保護指導課へ意見を提出したことにとどまりました。

これまでの活動のなかでは、すでに生活保護同伴(10〜14ページ)で報告したとおり、
野宿者の「自立」支援に関わる課題が多く見えてきました。支援団体としては、目の前の当事者とともに、
こうした問題に向き合う必要があることはもちろんです。しかし、これらは当事者個人や支援団体のみが抱え込む問題ではなく、
行政も対応すべき問題であることはいうまでもありません。行政に問題の本質を知らしめ、具体策を提起していくことを通じて、
問題を社会化することは支援団体の責任でもあります。今年度は、行政との関係においてこの点が弱かったことが反省点の一つですが、
来年度は、活動の中で蓄積してきたことを、何らかの形で行政に、より効果的に伝えることが課題となると思います。
さしあたっての課題としては、当会の意見や要望を公式に行政へ伝えるということ、
また、札幌市のみならず国や道にも積極的に働きかけていくこと、の二点があげられます。

6.会計報告 (寺嶋祐一/会計担当)… 省略

7.今年度の課題と来年度の活動 (安部薫道)

札幌における路上生活者問題の情勢は,ここ数年の人数調査の結果からも(参照:資料),
また行政の施策・保護運用の不十分さが露呈しているということからも(参照:生活保護同伴報告,他団体・機関との連携)
依然として極めて深刻であるといえます。今年度50名を越す当事者が保護申請後脱路上を果たしたにもかかわらず,
人数調査をすれば毎回100人近くが確認されるということを考えると,「いっこうに減らない」という現実があるといえます。

さて,発足5年を迎え、会は成長し活動は拡大してきました。行政との合同人数確認調査、
炊き出し・総合相談会の共催、それから事務局への当事者からのアクセスはもとより、
一般市民からのアクセスも増えたことに鑑みると、社会的に、会の役割に対する期待が大きくなってきているともいえます。
このこと自体は当事者にとっては利益そのものであるといえますが、
しかし実はその反面、会のキャパシティがそういった事情についていけなくなってきているという事態が深刻化しています。
端的にいうとスタッフ・資金が不足してきているのです。
最大限に当事者のニーズに応えるためには、私たちはこういった内在的な問題をクリアせねばなりません。
とはいうものの「強い組織作り」は今日明日どうにかなるような簡単な問題ではないというのが事実です。
中・長期的課題として打開策を打ち出していきたいと思います。 

ただ、力量の範囲内で当事者の期待を裏切らない活動を持続していくために、
来年度以降、活動内容の再検討・整理・代替案の模索は随時行っていきます。
活動が悪い意味で固定化しないために、常に当事者のためになることは何か、それを能力の範囲内で効果的にやるためにどうするか、
優先順位はどうか、などについて議論を行い、それに基づいて活動していきます。
具体的には定期的な役員会議を設けて事務局会議の効率化を図ろうと思います。
また、同伴ケースの共有・引継ぎの場を設けて少ないスタッフでもやっていける体制を作ろうと思います。
スタッフ・資金に関しては、会が「ボランティア団体」である以上難しい問題であるといわざるを得ません。
しかし、来年度はそれらを獲得する努力は当然として、
立ち止まって自らの活動を再検討して事情に見合った柔軟な姿勢に切り替える勇気をもって取り組みたいと思います。

最後になりましたが、私たち今年度の役員は会の規約の通りその役目を今日終えます。
一年間会を動かしてきて思うこと、それは問題がそう簡単には解決できない非常に困難なものであること。
それからそれに取り組む会がなんと脆弱であるかということです。しかしたとえ非力であっても、
私たちは当事者という市民が餓死したり凍死したりするのを黙ってみている市民でありたくないのです。
活動を必要とする人がいる限り、私たちは市民団体として存在し続けます。来年度の役員に、活動の「灯を消さない」ことを期待します。

8.私と労福会 … 省略

9.来年度の役員紹介 … 省略

10.巻末資料

資料1 2003年度夏・冬の人数確認調査報告 〜「札幌市内人数把握調査について」

はじめに

「労福会」が発足した1999年の冬以来、夏と冬の年2回、札幌市内にいる路上生活者の人数をカウントしてきました。
私たちが支援活動を続けるなかで、その実態を少しでも知りたいという思いがあり、そのひとつの行動として、
人数調査をあげることができます。どのような場所にどれくらいの人たちが生活しているのか、
また季節や長期的にみた人数の推移がどの程度あるのか把握するよう努めてきました。

札幌の場合、特に冬期間は雪と寒さから身を守らなければならず、本州の都市などと比べると、
「越冬」は命にもかかわる大きな問題です。しかも、札幌には一時宿泊所がないため、
彼らは、屋根のついたバスレーンや地下街の入り口、橋の下などでダンボールの囲いを作り、風雨・雪をしのぐといった生活をしています。
「労福会」の参加者が調査という形を通じて、こういった生活実態を確認し、社会に訴えていくと同時に、
「炊き出し」や「夜回り」などの支援活動と結び付けながら、調査結果を生かしていく必要があります。

調査をするにあたって

これまでの経験から私たちは、札幌にはおおよそ100名近くの路上生活者がいることを知っています。
さらに、札幌駅周辺と大通公園、ススキノに寝場所の多くが集中し、
それ以外には豊平川の河川敷や地下鉄沿線、主な公園などでも確認されています。
したがって、調査範囲もこういった地域に限定して行なうことにしました。また、調査開始時間も重要です。
寝場所を中心に人数をカウントしないと、果たして路上生活者なのかどうかの判断ができないという難しさがあるため、
調査の時間帯には注意を払う必要が出てきます。彼らは、寝場所によって違いはあるものの、
たいてい朝は早く、駅や地下街が開く時間には、寝場所からいなくなってしまうため、
薄明かりの中、かろうじて人数や性別が確認できる朝の早い時間帯に実施することにしました。

これらの条件を満たしながら、調査を行なうには最低30人程度の調査員が必要になります。
早朝の調査のため、参加できる人たちも限られます。「労福会」のメンバー以外にも、
「路上生活者問題」に関心のありそうな人たちに参加を呼びかけ、何とか最低必要人数を確保しているというのが現状です。
しかし、さらに多くの人数が確保できれば、ススキノのように雑居ビルが建ち並んでいるような地域を
より丁寧に調査ができるものと思われます。

また、12月13日の冬の人数調査は、札幌市の委託を受けるという形で行なわれました。
調査の実施要領を決めていく段階から、「労福会」と札幌市の間で話し合いがなされ、
実際に市の職員も調査員として参加しました。調査手法等は「労福会」のやり方を踏襲しており、
今後、行政が中心となって路上生活者対策が本格化するなかで、今まで「労福会」で培われてきた経験が生かされようとしています。

調査の方法と課題

主に2人1組になって各区域を回り、寝場所を中心に、路上生活者の人たちが集まりそうな場所を尋ね歩きます。
そして目視で(場所・性別・荷物・年齢などを)確認していきます。
ただし、必ずしも、すべての人たちが決まった場所で寝泊りしているとは限らなく、
一晩中歩いている人たちやどこかの建物の中に入ってしまう人たちもいるので、私たちが把握できない人たちも少なくないはずです。
また目視のため、たとえ路上生活者であっても、見過ごしているという可能性も否定できません。
この点を考慮すると、調査の結果から出された人数以上の路上生活者が札幌市内には存在していると考えられます。

夏調査の結果(2003年7月5日実施:調査時間6:00〜8:00)
調査場所人数
札幌駅・駅前バスターミナル40
大通・狸小路23
すすきの・中島公園3
地下鉄南北線 (麻生・北24条・すすきの・真駒内等)0
地下鉄東西線 (宮の沢・円山・白石・大谷地・発寒南・新札幌等)6
地下鉄東豊線 (栄町・福住・新道東等)調査中止
JR沿線主要駅(桑園・琴似・新琴似)0
公園(円山公園・真駒内公園・農試公園・美香保公園・月寒公園)0
豊平川河川敷(東大橋〜ミュンヘン大橋)14
合計88
冬調査の結果(2003年12月13日実施:調査時間4:30〜7:30)
調査場所人数
札幌駅・駅前バスターミナル29
大通・狸小路44
すすきの・中島公園1
地下鉄南北線(麻生・北24条・すすきの・真駒内等)1
地下鉄東西線(宮の沢・円山・白石・大谷地・発寒南)0
地下鉄東豊線(栄町・福住・新道東)0
JR沿線主要駅(桑園・琴似・新琴似・新札幌)1
公園 (円山公園・もなみ公園・豊平公園)0
豊平川河川敷 (北13条大橋〜ミュンヘン大橋)15
合計91

調査結果から

夏と冬では、全体の人数に大きな変化はみられず、1年を通じておおよそ90名の路上生活者が確認できました。
これは、氷点下10度以下を記録することもある真冬の寒空のなか、
夏と変わらない規模で野宿を強いられている人たちがいることをあらわしています。

区域別では、札幌駅周辺と大通周辺が圧倒的に多いことがわかります。
札幌駅周辺の場合、駅前バスターミナルのバスレーンにそのほとんどが集中します。
最終バスが発車したのち、ダンボールで風除けを作り、布団や寝袋で一夜を過ごします。
夏場に限れば、駅南口や大丸デパートの周りにあるベンチで寝ている人たちもいます。
大通周辺の場合は、屋根のついた地下街の出入口でダンボールの風除けを作り、数人のグループごとに別れながら寝ています。
さらに夏場では、大通公園内のベンチでも寝ている人も数多くみられます。
ススキノ周辺では、雑居ビルの階段や空いているスペースで寝ているという話も聞きますが、
それがどのビルのどこの場所なのか、はっきりしたことはわかっていません。
そのため、今年度の調査でも、ススキノ周辺では、明らかに路上生活者だと思われる人たちをほとんど確認することができませんでした。
河川敷では、北13条大橋からミュンヘン大橋付近まで、テントや簡単な小屋で生活している人たちがいました。
しかしなかには、橋の下で布団だけで寝ている人もおり、冬の寒さに耐える厳しさは、私たちの想像をはるかに超えるものかもしれません。

私たちは、生活保護申請の同伴や体の不調を訴える人たちに対して、病院に入院させてもらえるよう、
可能な限りの手助けを行なってきました。そして毎年多くの路上生活者が野宿の状況から抜け出してきたのも事実です。
しかし、人数把握調査を行なうたびに、まだまだ多くの人たちが野宿の状態であることを目のあたりにし、
粘り強く活動を続けていく必要性を再確認させられます。

今後、これまでの経験や集められた情報をもとに、路上生活者がいると思われる地域をより慎重に調査をすすめると同時に、
調査参加者の人数の問題などが解決されれば、札幌の中心部から離れた郊外で生活している人たちがいる可能性をも探りながら、
さらに積極的に調査を繰り広げていくべきかもしれません。寝場所や全体の人数がわかれば、
「炊き出し」「健康診断」などの支援企画を充実させるうえで役立つばかりでなく、「夜回り」などを通じ、
彼らに必要な多くの情報を提供することが可能になります。
調査の方法も含め、より正確な実態を把握できるようこれからも工夫を重ねて参ります。

資料2 「炊き出し・総合相談会」で札幌市と合同で行ったアンケートの結果 … 省略

  1. 総会当日に配布した資料にあった誤脱字などは訂正してあります
  2. 当会役員の役職は2003年度のものです