ともに生きる No.6 (2002年8月13日発行)

事務局長あいさつ 〜今後の労福会の方向と可能性〜

はじめまして。今年度4月より事務局長に就任した諏訪です。
会の活動に関わるようになってから約1年半が経ち、「お客さん」としてお手伝いしつつ、
活動のあり方を会議などで批判しているうちに「じゃあ、お前がやれよ」ということになってしまいました(笑)。
ここでは、これからの会としての活動の方向性について事務局長という立場からの意見を簡単に述べておきたいと思います。

まず、今後の活動の方向性ですが、従来通り炊き出し、夜回りなどを通じて当事者に関わり続けることで
信頼関係を築くなどケースワーク的な支援を行うことと並行して、
行政に対して当時者の立場からどのような働きかけを行っていけばよいかということが課題になると思います。

先日、「ホームレス自立支援等に関する特別措置法(自立支援法)」が国会で可決されました。
これに対して札幌市では「今の政策を維持することになる(※)」
(特別な施策ではなく従来通り生活保護で対応すること)と言っています。

このような行政の動きに対し、会としては生活保護の適正な手続きに従って適用することを促すとともに、
健康問題や住宅問題に対しても何らかの策を講じるよう働きかけることができればよいと考えています。
ただ、札幌市では野宿者問題が東京や大阪などの大都市に比し、
当事者の数が少ないなどあまり深刻化していないという認識が一般的なため、市民の問題として捉えられていないのが現実です。
したがって会の活動をもっと外に向けてアピールしていく必要があるでしょう。

さて、これはあくまで私見ですが、現在「通称」労福会では「学生主体のボランティア」から、
市民としての活動の変革期にあるといえます。もちろん私のような小娘が事務局長をやっている時点で
「学生生活優先の無理のない」活動であることには変わりありませんが、
一部ではプロのケースワーカーばりの悩みを抱えて頑張っているスタッフもいます。
普通の学生生活を送っている人から見れば一歩引いてしまうような、少々辛目の活動でも、
今後会がどのような可能性を持ち得るのかということについて、学生としてというより市民として何ができるのか、
または何をすべきなのかを真剣に問い続けていこうと思いますので、皆様も今後温かく見守ると同時に、
時には一歩踏み出して活動に参加してみて下さい。事務局一同心よりお待ちしております。m(_ _)m

(※)2002年7月19日朝日新聞朝刊より

第17回健康生活相談会報告

7月27日(土)の18:00より市民会館(北1西1)にて、私たち北海道の労働と福祉を考える会が、
これまでにも定期的に行っている健康生活相談会を開きました。

はじめて会のことを知る方のために簡単に説明しますと、路上生活を送っている当事者の中で
健康上の不安などをもつ方に対応するために、血圧や検尿、問診を行い(お医者さんがしてくれます)、
そこで問題が見つかれば病院につなげていく健康相談と、おにぎりや豚汁、風呂券など、
私たちのできる範囲で用意する食事と生活用品の配布、生活上の悩みや不安などに対応するための生活相談
(とは言っても私たちの現在の力量ではもっぱら話を聞くということになってしまうのですが)といったことを行っています。

これまで何回か行ってきた経験に基づいて配布する食事と生活用品を100人分用意していたのですが、
今回は合計で109名の当事者の方が来場することとなりました。そのため、最後の方に来た方には
モノが配れないというハプニングも起きましたが、配られなかった方たちも状況を理解して下さり、
大きなトラブルもなく開催することができました。今後は配るものをもう少し多めに用意する必要があるかも知れません。
特に老人ホーム静山荘の皆さんにボランティアで協力して用意していただいているおにぎりと豚汁はいつも大盛況です。
「もっと具を多く入れてくれないか?」とか「おかわりはできないかい?」といった当事者の方の要望にできるだけ応えようとしながら、
また全員に食事が行き渡るように注意しながら、配る私たちの技術も回を追う毎に熟練(?)してきました(笑)。

また、総合学習の一環としてホームレス問題に興味を持ち、会に顔を出してくれた中学生の二人や、
路上生活者支援について問題意識を持っている民医連の方々など、健康生活相談会に初めて参加した支援側の人数も多く、
私たちの活動が徐々にではありますが市民の方たちに広がってきているという感触を得ることもできたように思います。

今回の生活健康相談会では、「路上生活当事者の人たちに生活保護について正しい知識を持ってもらおう」ということをテーマに掲げ、
そのための生活保護説明会を実施しました。これは生活保護の受給を希望して区役所に申請に行ったのに、
納得のいかないまま追い返される人や、せっかく生活保護が受給できて路上生活から抜け出すことができたのに、
生活保護についての知識がなかったり、間違って理解していたために再び路上生活を送ることになった人が多くいることが分かってきたからです。
説明会用のパンフレット「みんなの生活保護」を作成し、また説明用のイラストを大きな模造紙に描いて、
できるだけ分かりやすいものにしようということを心掛け、およそ30分ほどの説明会をおこないました。
当事者の方からの質問もいくつか挙がり、初めての試みとしてはまずまずの反応であったように思います。

当事者の方に情報を提供していくことはとても重要であると思います。
今回の試みがどのくらい効果があったかは分かりませんが、今後も様々な形で生活の役に立つような情報の提供を続けていくことができたらと思います。

2002年度夏札幌路上生活者人数確認調査のご報告 〜80名以上の路上生活者を確認〜

2002年7月6日(土)早朝、札幌市内で生活している路上生活者の人数確認調査を行いました。
この調査は毎年夏と冬に実施しており、札幌市内のどこにどれだけの路上生活者が生活しているのかを把握するとともに、
毎年同時期に行うことによって大まかな人数変化をみるためのものです。

調査は、第1次(4:30〜6:00)と第2次(6:00〜8:00)の二回、会員や有志の方を募り22名の協力のもと、
市内の中でも路上生活者がいると予想される区域を目視確認という形で行いました。
結果は下記の表に示してありますが、調査方法の限界から路上生活者かどうか区別がつかない人たちや、
「すすきの」のように寝床の場所が特定できない区域も多数あるため、
実際には今回の調査で確認できた人数よりも多くの路上生活者が札幌にいると予想されます。
また、調査参加者人数にも限りがあったため、札幌市内全域をカバーすることができなかったことを付け加えておきます。

2002年度夏札幌路上生活者人数確認調査結果
札幌駅周辺大通り周辺中島公園豊平川河川敷地下鉄麻生駅バスセンターJR桑園駅農試公園
第一次調査4:30〜41341500081
第二次調査6:00〜413124(1)(1)179(81)

北海道民医連との懇談について

これまで、路上生活者に対する支援を続けてきて、学生の力だけではどうすることもできない困難な場面にいくつか遭遇してきました。
そのひとつとしてあげられるのが、路上で生活していてからだの具合が悪くなった人達を医療機関につなげる時のことです。
「健康保健や医者に診てもらう費用を持っていない場合の多い彼らが体調を崩したとき、私たちはどうすればよいのか」
その課題を解決するためには、私たち学生だけでなく、もっと多くの人達の力が必要となります。
そこで7月10日、当会代表の椎名先生と北海道民医連・北海道勤医協との間で路上生活者を支えるための今後の取り組みについて話し合いが行われました。

この話し合いのなかで民医連側は基本的に、「路上生活者に対する活動を、医療福祉機関の立場から可能な限り積極的なお手伝いをしたいと考えています」
という見解を明らかにしてくれました。具体的な話し合いの内容は以下のとおりです。

お手伝いが可能な場面

「北海道の労働を福祉を考える会」との関わり方の基本

以上が、第一回目の話し合いの結果でした。今後とも路上生活者支援という共通の目的を通じて、
よいかたちでの支援連携が続けていけることを期待します。