ともに生きる No.7 (2003年7月1日発行)

事務局長あいさつ

はじめまして4月に事務局長に就任しました安部薫道です。
今年度第一号の会報を発行するにあたり、遅ればせながらご挨拶させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

さて、さっそく今年度の基本方針についてですが、今年度も従来通り炊き出しや夜回り等の活動を通し、
路上生活者に関わり続けながら脱路上支援をします。またそれに加えて、
脱路上後の居宅生活者の支援について考えていきたいと思います。

ところで昨年度は実に会の活動が充実しました。すなわち全四回の炊き出し、
夜回り、調査、学習会など多くの実績を残すことが出来ました。また行政との関係では、
民医連さんとの協力で行った「年越し健康祭り」に関して、
市が市民に対して行っている「すこやか検診」を適用して検診費用を負担したことが挙げられます。
さらに、札幌市は、ホームレス自立支援法の適用によりホームレスの全国調査を会に委託しました。
このことは、行政側が会の活動を認め、協力を求めてきたということになります。
一方、毎回炊き出しの食事を作ってくださる静山荘さんはもとより民医連さん、
多くの市民の方々から協力を得ることにより会の「活動力」が増大しました。
事実毎回の炊き出し、事務局会議に参加するメンバーは学生と市民の方の割合が半分ずつとなり、
当初の学生主体というスタイルに変化が見られました。

昨年度の活動成果は数え切れませんがいくつか課題が残ったのも事実です。
大きくなりつつある会の「活動力」をどのように効率よく発揮するか、様々な意見を持った方々の集合であり、
「ボランティア団体」という特殊な性格の集合でもある会がこの問題を乗り超えていくのは簡単なことではないと思います。
せっかく大きくなりつつある火を絶やさないようがんばります。この一年でいろいろと勉強させていただく中で自分の考えを持ち、
会に関わりながら還元していくことが個人的な目標です。至らないことも多いと思いますがどうぞよろしくお願いします。

(文:事務局長・安部薫道)

健康相談活動−平成14年度の実践−

1999年末から始まった支援活動も年が明け、 4年目を迎えました。
毎回の企画ではビラ配りに始まり、炊き出し、健康・生活相談が行われ、
その後は役所や病院への同伴、夜回り、実態把握調査等が行われてきました。
そしてこれらの活動の背後にはいつも数多くの方々の有形無形のご支援が存在してきました。
平成14年度の健康相談活動を振り返るにあたり、そうした支援者の皆様に、まずは深く感謝申し上げたいと思います。

さて、これまで健康相談部門では、主に医療・福祉系学生諸君の協力を得て、
尿検査、血圧測定、問診等を行い、それらの結果により、精査や治療の要否を医師が総合判断し、
特に緊急性のあるケースを、生活相談部門の担当者につなぐという形が採られてきました。
平成14年度は、この基本形に加えて、新たに市販薬の少量提供や簡単な消毒治療処置なども行うようになりました。
また、10月には、普段から活動に積極的に協力して下さっている市民の方からの要請にしたがって、
フィールドに出向いての健康相談を行いました(芳賀、通算 2例目)。

平成14年度の定例支援企画は計 3回( 5月、 7月、10月)行われました。
毎回、10−20名の相談者が健康相談部門を訪れますが、共通して言えることは、
野菜の摂取不足が著しいということです。また、高血圧症や糖尿病の疑いのある方が少なからず見出されます。
免疫力低下も関係しているのでしょう、 7月の企画では、夏にもかかわらず風邪気味の方が多くいました。
残念ながら、かぜ薬の在庫不足のため(準備不足も一因ですが)、必要量を提供できませんでした。
会の財政事情にもよりますが、15年度には、かぜ薬、胃腸薬、消毒薬、湿布剤などの市販薬をもう少し確保しておきたいと思います。

14年度のトピックは、何といっても「健康相談祭り」の開催でした。
民医連のご賛同のもと、総勢40名の職員の方々のご協力をいただいて、これに30名の学生・市民の方々も加わり、
検診車も動員した本格的な健康相談会が12月に行われました。また、翌年 1月にはそのフォローアップ相談会も行われました。

受診者は46名でした。検査結果の詳細は民医連のご報告にお任せしますが、
「異常なし」のケースは少なく、半数は「精査や治療」の必要なケースであったといいます。
また、要治療と診断されたケースにはやはり高血圧者や糖尿病者が多く、痛風の方も含まれていたとのことです。

通常の健康相談会で把握しきれないケースを数多く見出すことができた点からも、
この度の「健康相談祭り」開催の意義は大きかったと考えます。ここに改めて民医連関係者の皆様に感謝の意を表したいと思います。
ただ、本格的な検査にはかなりの費用がかかります。幸いにも、今回は行政からの補助があったそうですが、その継続性は必ずしも担保されておりません。

ホームレスの方々の心身の健康は苛酷な生活の中で、確実に蝕まれています。
労福会の通常の健康相談活動を充実させる努力をする一方で、他のさまざまな機関とも連携を深めていくことが今後とも必要であると考えます。

(文:副代表・芳賀光治)

マナチャペルシンポジウムに参加して

4月19日にマナチャペルで行われた「今なぜホームレスか?」をテーマにしたシンポジウムに行ってきました。
パネルディスカッションでは、みなつき会、ホームレスの方々を支援する会、人権擁護委員会から代表の方が、
私たちの会からも椎名代表が参加し、貴重なお話を聞くことができました。
印象に残ったのは、最後に各団体が連携して支援に取り組むことが申し合わされたことです。
このような意見交流の場がもたれることは重要であり、長い目で見ればコンスタントに行ってもよいと思います。
各団体がそれぞれの持ち味を生かした役割分担をして効率よく支援を行っていければと思います。

(文:安部薫道)

平成15年度、第一回生活健康相談会の報告

5月18日(日)に、札幌市民会館で今年初めての生活健康相談会を行いました。

122人の路上生活者と、44人の支援者が集まり、会場はにぎやかでしたが、
配布物資が足りなくなった他は特に混乱もなく、いくつかの反省点を残しつつも無事終了することができました。

今回は、物資配布(風呂券1枚・カイロ・歯ブラシ・タオル・石鹸・靴下・缶詰・おにぎり2個・豚汁)、
衣料品(段ボール数箱分)配布、健康相談、生活相談、生活保護申請の区役所への同伴約束を行いました。

生活健康相談会は、私達労福会の活動の中では、ひとつの重要な意味を持つ企画と位置づけて毎年行っているものです。
今回は路上で厳しい生活をされている方に必要最低限の物資を配ること、安らぐ場所を提供すること、
労福会とコミュニケーションをとる機会をつくること、などの目的で実施しました。

毎回80人程度の参加者だと聞いていたのですが、それを大幅に上回る参加者に、
こちらも非常に驚きながら、物資があたらなかった方にはおにぎりを買い足して渡しました。

春になって雪もとけ、冬場とは路上生活者の寝場所も変わってきました。
そのため春になってから札幌の路上生活者が増えたかどうかを判断するのは非常に難しいのですが、
今年になってから行っている夜回りでは、初めて見る方が何人もいらっしゃるように思われます。
今回は支援者側でも初めて参加された方も多く、今後の継続的な関わりを期待しています。
企画後に行った反省会では、散髪をしたいという路上生活者の声に応えられないか、
初めて参加する支援者に効果的に関わってもらうにはどうしたらよいか、
生活保護の説明を改めて行った方がよいのではないか、などの意見が出ました。

次回は7月19日(土)18:00から、同じく市民会館で二回目の生活健康相談会を実施します。
今回の反省を生かして、一層質の高い企画にしたいと思っております。

(文:事務局・椎名結実)

健康相談部門報告

今回の健康相談は医師 1名と学生 4名(医学生と看護学生各 2名)で対応しました。相談者は合計で18名(来場者 123名の約15%)でした。
このうち医師診察を受けたのは16名であり、残り 2名は検査(血圧測定や尿検査)のみの相談でした。

18名はすべて男性で、年齢幅は35−71歳(30代 1名、40代 3名、50代 9名、60代 3名、70代 1名)でした。

受診者16名の症状は、痰、咳、鼻汁、喉痛などの感冒様症状( 8名)、高血圧傾向( 5名)、
皮膚炎(疑い)による下腿部の顕著な発赤腫脹( 1名)、著しい視力低下( 1名)、上肢の筋力低下・挙上困難(肩部腫瘍被摘出者 1名)、
胸部皮疹( 1名)でした(一部重複ケースあり)。ちなみに、尿検査結果異常の方は特に認められませんでした。

感冒様症状者はいずれも軽症であり、市販かぜ薬を提供しました(但し、ストックが少ないため、提供量は各人 1− 2日分のみ)。
また、胸部皮疹者には軟膏塗布を行いました。 高血圧傾向者のうち、測定直前に喫煙・飲酒がなく、特に高値( 200以上/ 110以上)を示した方 1名
および、下腿部腫脹や視力低下を示す方々はいずれも早急な精査や治療が必要であると判断されました。
また、上肢の可動域制限・筋力低下を主訴とする方(65歳、生保申請希望) 1名も就労困難の可能性が高いと思われました。
従って、今回はこの 4名の方々を健康相談部門経由の生保申請希望者として生活相談部門の担当者に引き継ぎました。

(文:芳賀光治)

人権擁護委員会の方々との懇談会について

去る6月9日、人権擁護委員会に参加されている弁護士の方々と、
各ボランティアグループ(みなつき会、ホームレスの方々を支援する会、北海道の労働と福祉を考える会)の代表が集まり、
懇談会が開催されました。目的は、人権擁護委員会の方々が、弁護士としてホームレス問題に関してできることは何かということを、
各ボランティアグループとの議論のなかで考えていこうというものでした。

私たちが今までホームレス問題に関わり、生活保護申請同伴などを行ってきたなかで、
法律家の手助けが必要だと感じた事例はいくつもありました。それは、生命保険などの財産所有の問題や、
借金などの問題、さらに生活保護法という法律の解釈をめぐって、役所と当会との考え方に食い違いが生じたときなどです。
その他にも、法的対応が必要と思われる様々な問題を抱えながら、ホームレスとなっている方々はたくさんいると考えられます。
そういった問題を抱えた個々のケースを丁寧に見ていくとき、法律家の方の手助けは、とても大きな力になると思います。
懇談では、当会にも参加されているみなつき会のメンバーの方が、いま実際に関わっているケースを具体的に提示し、
その当事者が抱える問題の解決法について、人権擁護委員会の方々から様々なアドバイスをいただきました。
この事例一つを見ても、いかに法的な対応が当事者の抱える問題の解決に重要かということがよく分かりました。

当会の活動のなかに、約2ヶ月に一度行う「生活・健康相談会」と、不定期に行う「夜回り」、
さらにスタッフの間で行われる「学習会」や「事務局会議」などがあります。
例えば、生活・健康相談会で法律相談コーナーの設置や、夜回りで当事者の方々のところへ直接行ってお話を聞くなかで、
法的な問題を抱える方に助言することや、学習会で生活保護法とその実態について議論するなど、
法律家の方々がボランティアグループへ参加する形態は様々に考えられます。そういった支援の輪を広げていくことで、
当事者の方々の自立に大きな力を与えることができると、この懇談会を通じて強く感じました。

(文:事務局・坪田裕佳)